気管支喘息
気管支喘息とは
気管支喘息の正体は、単に気管支が狭くなることではありません。
その根本には、空気の通り道である気管支の「慢性的なアレルギー性の炎症」が隠れています。
喘息の方の気管支は、症状がない時でも、常に軽い炎症がくすぶっているような状態です。
これを例えるなら、火事が起きた後の「焼け野原」のようなものです。
表面は落ち着いて見えても、地面の下はまだ熱く、非常に敏感で、ささいなことで再び燃え上がりやすい状態なのです。
普段の状態(症状がない時)
気管支の粘膜は常に炎症を起こし、刺激に過敏になっています。
刺激が加わる
そこにホコリ、ダニ、ペットの毛などのアレルゲン、風邪のウイルス、冷たい空気、タバコの煙といった刺激(アレルゲン)が加わります。
発作が起きる
刺激が加わると過敏な気管支が激しく反応し、急激に狭くなります。
その結果、空気が通りにくくなり、激しい咳が出たり、息を吐く時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音(喘鳴:ぜんめい)がしたり、息苦しさを感じたりする「発作」が起こるのです。
大人と子どもの喘息チェックリスト
喘息は子どもだけの病気ではありません。
大人になってから初めて発症する方も大勢います。
以下のサインは要注意です。
大人の喘息チェックリスト
- 風邪をひいた後、咳だけが2~3週間以上続く
- 夜中から明け方にかけて、咳や息苦しさで目が覚めることがある
- 季節の変わり目や、台風・大雨など天気が崩れる前に咳が出やすい
- 運動中や運動後に、咳き込んだり息苦しくなったりする
- 電話で長時間話すと咳き込んでしまう
- タバコの煙やホコリ、香水などの強い匂いを吸い込むと咳き込む
- アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、花粉症の持病がある
子どもの喘息チェックリスト
- 風邪をひくたびに、咳が長引き「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音が出る
- 走ったり、大笑いしたり、はしゃいだりした後に咳き込む
- 夜中や朝方に咳き込んで起きてしまう、または咳き込んで吐いてしまう
- 胸のあたりが苦しい、痛いと訴えることがある
喘息治療のゴールは「発作のない健康な毎日」
喘息治療の目的は、ただ発作を鎮めることではありません。
「発作が全く起きない状態を維持し、健康な人と変わらない日常生活を送ること」が、現在の治療のゴールです。
そのために最も重要なのが、お薬の正しい使い方です。
長期管理薬(コントローラー)
気管支の根っこにある「慢性的な炎症」という火種を、毎日使い続けることで鎮めていく薬です。
症状がない時も、医師の指示通りに毎日吸入することで、敏感だった気管支がだんだんと健康な状態に近づき、発作そのものが起きにくくなります。
発作治療薬(リリーバー)
発作で急に狭くなった気管支を一時的に広げ、苦しい呼吸を速やかに楽にするための薬です。
あくまで「応急処置」のお薬であり、こればかりに頼っていると、根本の炎症は放置されたまま悪化し、より大きな発作を招く危険なサインです。
喘息診療について
当院では、患者様一人ひとりが「発作ゼロの毎日」を実現できるよう、丁寧な診療を心がけています。
客観的データに基づく正確な診断
丁寧な問診と肺活量などを調べる呼吸機能検査(スパイロメトリー)などを行い、気管支の状態を客観的に評価します。
吸入指導の徹底
吸入薬は、正しく吸えて初めて効果を発揮します。
当院では、看護師も連携し、患者様が吸入薬の正しい使い方を完全にマスターできるまで、時間をかけて丁寧に指導いたします。
患者様との二人三脚
治療のゴールを共有し、あなたのライフスタイルに合わせた治療計画を一緒に考えます。
あなたが主体的にご自身の病気と向き合えるよう、信頼できるパートナーとしてサポートします。
小児から成人まで一貫したサポート
当院はお子様の小児喘息から、成人喘息、ご高齢の方の喘息まで、ライフステージを通して一貫した診療を提供できるのが強みです。
咳や息苦しさでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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日常生活でのセルフケア
お薬による治療と合わせて、日常生活で以下の点に気をつけることも、安定した状態を保つために非常に重要です。
アレルゲンの除去
ダニやホコリは喘息の大きな敵です。
こまめな掃除機がけ、寝具の洗濯や防ダニシーツの活用、空気清浄機の使用などが有効です。
感染症の予防
風邪やインフルエンザは、喘息発作の最大の引き金の一つです。
日頃からの手洗いや、インフルエンザワクチンの接種を心がけましょう。
禁煙・受動喫煙の回避
タバコの煙は、気道にとって最悪の刺激物です。
ご自身の禁煙はもちろん、ご家族にも協力してもらい、受動喫煙を避けましょう。
心身のコンディション管理
過労や睡眠不足、精神的なストレスも発作のきっかけになります。
規則正しい生活を送り、リラックスできる時間を作りましょう。
患者さんへ
長引く咳や息苦しさは、決して「体質だから」と我慢するものではありません。
気管支喘息は、正しく診断し、専門医と二人三脚で根気よく治療を続けることで、症状をコントロールし、運動や旅行も含め、健康な人とほとんど変わらない生活を送ることができる病気です。
無治療のまま症状を繰り返すと、気管支が分厚くなり内腔が狭くなるリモデリングという状態になります。
こうなると、治療を開始しても中々改善しにくくなるため、2-3週間以上の長引く咳は早めの受診をお勧めします。
