COPD（慢性閉塞性肺疾患）
COPD（慢性閉塞性肺疾患）とは
COPDは、主に長年の喫煙習慣によって、空気中の有害物質が肺に慢性的な炎症を引き起こし、呼吸がしにくくなる病気です。肺の中では、主に2つの変化が起きています。
肺気腫（はいきしゅ）
肺の中には、酸素を取り込むための「肺胞」という、ぶどうの房のような小さな袋がたくさんあります。タバコの煙などの有害物質は、この肺胞の壁を少しずつ破壊していきます。その結果、肺は弾力を失った古いゴム風船のようになり、息を吸っても、空気を十分に吐ききることができなくなってしまいます。
慢性気管支炎（まんせいきかんしえん）
空気の通り道である「気管支」にも慢性的な炎症が起こり、常に痰がからんだり、気道が狭くなったりします。
この「肺気腫」と「慢性気管支炎」が合わさった状態がCOPDです。肺の機能が徐々に低下し、体は慢性的な酸欠状態に陥り、息切れという症状として現れるのです。
COPDのセルフチェック
以下の項目をチェックしてみてください。
- 40歳以上で、10年以上の喫煙歴がある（または、過去にあった）
- 坂道や階段、あるいは同年代の人と同じペースで歩くだけで息切れがする
- 風邪でもないのに、慢性的に咳や痰が出る
- 息をするときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がすることがある
- 風邪をひきやすく、一度ひくと咳や息切れがなかなか治らない
- 以前と比べて、外出するのが億劫になった
- 食欲がないわけではないのに、体重が減ってきた
一つでも当てはまる方は、COPDの可能性が隠れているかもしれません。ぜひ一度、専門医にご相談ください。
禁煙指導
COPDの進行を食い止めるために、何よりもまず取り組むべき、そして最も効果的な治療があります。それが「禁煙」です。
喫煙を続ける限り、肺の破壊は加速し続けます。禁煙は、その破壊のスピードを健康な人と同程度まで緩やかにすることができる、唯一の方法です。禁煙は、死亡率を減少させることもわかっています。しかし、長年の習慣を一人で断ち切るのは非常に困難です。当院では、貼り薬を使い、医師のサポートのもとで楽に禁煙に取り組める「禁煙外来」を、保険適用で行っております。一人で悩まず、ぜひ私たちにご相談ください。禁煙外来で処方できる薬はニコチンパッチ（ニコチネルTTS）のみとなっています。
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息切れを和らげ、毎日を楽にする薬物療法
禁煙と並行して、息切れの症状を和らげ、快適な日常生活を送るための中心となるのが、「気管支拡張薬」の吸入薬です。
これは、狭くなった気管支を広げることで、空気の通りを良くし、呼吸を楽にするお薬です。1日に1回、あるいは2回の吸入を毎日続けることで、息切れが改善し、以前よりも楽に動けるようになります。それにより、散歩や趣味といった活動的な時間を取り戻し、生活の質（QOL）を大きく向上させることが期待できます。 この吸入薬の効果を最大限に引き出すためには、正しく吸入することが不可欠です。当院では、吸入器の使い方を丁寧に指導し、あなたが確実に治療を続けられるようサポートします。息切れや長引く咳でお困りの方は、ぜひ当院へご相談ください。
当院の診断とサポートの特徴
当院では、薬物療法だけでなく、患者様一人ひとりに寄り添ったトータルサポートを目指しています。
診断の基本は「呼吸機能検査」
COPDの診断で重要なのが、呼吸機能検査（スパイロメトリー）です。これは、マウスピースをくわえて、思い切り息を吸い、その後、勢いよく「フッー」と吐き出すだけの簡単な検査です。痛みもなく、数分で終わります。この検査で、あなたの「肺年齢」や、気道がどれくらい狭くなっているかを客観的な数値で評価することができます。
薬だけではないサポート
呼吸リハビリテーション
息切れを楽にするための呼吸法（口すぼめ呼吸や腹式呼吸）や、無理のない範囲での運動療法についてアドバイスします。
栄養指導
COPDの方は痩せやすい傾向があり、体重が減ると体力や筋力も落ちてしまいます。適切な栄養管理も大切な治療の一環です。
適切なワクチン接種の推奨
COPDの方が肺炎やインフルエンザにかかると、急激に呼吸状態が悪化する「急性増悪」を起こし、命に関わることがあります。これを防ぐため、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種を強くお勧めしています。
患者さんへ
COPDは、一度壊れてしまった肺の組織を元に戻すことはできない、ゆっくりと進行していく病気です。早期に発見し、最大の原因であるタバコをやめ、適切な治療を継続することで、病気の進行を食い止め、息切れを和らげ、自分らしい活動的な生活を長く続けることが可能です。お困りのことがあれば、ご相談ください。
