高コレステロール血症
高コレステロール血症（脂質異常症）とは
まず知っていただきたいのは、コレステロール自体は、私たちの体の細胞膜やホルモンの材料となる、生命維持に不可欠な成分だということです。
決して「悪者」ではありません。
問題となるのは、血液中のコレステロールの「種類」と「バランス」の乱れです。
LDL（悪玉）コレステロール
肝臓で作られたコレステロールを、体の隅々の細胞へ運ぶトラックの役割をしています。
しかし、その量が増えすぎると、運びきれなかったコレステロールが血管の壁に溜まってしまい、動脈硬化を引き起こす元凶となるため「悪玉」と呼ばれています。
HDL（善玉）コレステロール
体中に余ったコレステロールや、血管の壁に溜まったコレステロールを回収して、肝臓に戻す「お掃除屋さん」の役割をしています。
動脈硬化を防ぐ働きがあるため「善玉」と呼ばれています。
「脂質異常症」とは、血液検査の結果、①悪玉(LDL)コレステロールが多い、②善玉(HDL)コレステロールが少ない、③中性脂肪（トリグリセリド）が多い、のいずれかに当てはまる状態を指します。
高コレステロール血症が続くとどうなるか
無治療の高コレステロール血症が続くと、「動脈硬化」が静かに、しかし着実に進行してしまうことです。
動脈硬化は、以下のようなステップで進みます。
- 増えすぎた悪玉コレステロールが、傷ついた血管の内壁に入り込み、「プラーク」というお粥状のこぶを作ります。
- プラークが徐々に大きくなるにつれて、血管の内側は狭くなり、血液の流れが悪くなります。
また、血管本来のしなやかさも失われ、硬く、もろくなっていきます。 - 何かのきっかけでこのプラークが破れると、それを修復しようと血液の成分（血小板）が集まり、血の塊である「血栓」が形成されます。
- この血栓が血管を完全に塞いでしまうと、その先に血液が届かなくなり、組織が死んでしまいます。
この現象が、心臓の血管（冠動脈）で起これば『心筋梗塞』、脳の血管で起これば『脳梗塞』となるのです。
高コレステロール血症は、これらの命に関わる病気の、まさに上流にある根本原因なのです。
高コレステロール血症が健診などでわかりましたら、一度当院に御相談ください。
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コレステロールが高くなる原因は？
コレステロール値が高くなる原因は、日々の生活習慣に隠れていることがほとんどです。
食生活
肉の脂身、バター、ラード、生クリームなどの「飽和脂肪酸」や、マーガリン、ショートニング、スナック菓子などに含まれる「トランス脂肪酸」の摂りすぎは、悪玉コレステロールを増やす大きな原因です。
運動不足
運動不足は、悪玉コレステロールや中性脂肪を増やし、善玉コレステロールを減らしてしまいます。
その他
肥満（特に内臓脂肪型肥満）、喫煙、過度の飲酒、ストレスなども悪化の要因です。
また、中には遺伝的な要因（家族性高コレステロール血症）によって、若い頃から非常に高い値を示す方もいらっしゃいます。
長年の生活習慣によって、悪玉(LDL)コレステロールが体の中で作られやすくなり、合併症リスクが高まります。
当院の治療法
当院での治療の目的は、単に検査数値を下げることではありません。
その先にある「将来の心筋梗塞や脳梗塞を予防すること」が最大のゴールです。
そのために、二本柱で治療を進めます。
まずは生活習慣の改善から
お薬を始める前に、あるいは始めてからも、生活習慣の見直しは不可欠です。
食事療法
減らすべきもの
脂身の多い肉、揚げ物、バターや生クリームを使った洋菓子、インスタントラーメンなど。
積極的に摂りたいもの
サバやイワシなどの青魚、食物繊維が豊富な野菜・きのこ・海藻、コレステロールの吸収を抑える大豆製品など。
運動療法
まずは「今より10分多く歩く」ことから始めましょう。
ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を、1日合計30分以上、できれば毎日続けることが理想です。
運動は善玉コレステロールを増やす効果も期待できます。
生活改善で不十分な場合は「薬物療法」
生活習慣の改善を数ヶ月続けてもコレステロール値が目標値まで下がらない場合や、すでに糖尿病や高血圧などがあり、動脈硬化のリスクが非常に高い場合には、お薬による治療を開始します。
現在、主に使われるのは「スタチン系薬剤」というお薬で、肝臓でのコレステロールの合成を抑えることで、血液中の悪玉コレステロールを強力に下げ、多くの研究で心筋梗塞や脳梗塞を予防する効果が証明されています。
「薬を飲み始めたら一生やめられないのでは？」とご不安に思う方もいらっしゃいますが、お薬はあなたの血管を守り、将来のリスクを管理するための重要なパートナーです。
生活習慣の改善を続けながら、お薬でリスクをしっかりとコントロールしていくことが大切です。
患者さんへ
高コレステロール血症は、自覚症状がないまま脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めます。
健康診断で指摘されたコレステロール値の異常は、「未来への警告」です。
生活習慣の改善や内服薬によって、合併症リスクは大幅に下がります。
また、最近の研究では認知症リスクを高めることも分かってきました。
高コレステロール血症は様々な病気とつながっているため、指摘されたら一度御相談ください。
