鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血とは
まず、貧血のメカニズムを理解するために、血液の働きをイメージしてみましょう。
私たちの血液の中には、「赤血球」という成分があり、その中に含まれる「ヘモグロビン」が、肺で受け取った酸素を全身の細胞の隅々まで届ける役割を担っています。
このヘモグロビンを作るために、中心的な材料となるのが「鉄分」です。
体内の鉄分が不足すると、質の良いヘモグロビンを十分に作ることができなくなり、酸素を運ぶ能力が低下してしまいます。
その結果、体全体が慢性的な「酸欠状態」に陥ってしまうのです。
これが、鉄欠乏性貧血です。
貧血による症状
体が貧血状態になると、様々な症状が現れます。
よく知られる貧血の症状
- 疲れやすい、体がだるい、倦怠感
- 動悸、息切れ（特に階段や坂道など、体を動かした時に感じる）
- 顔色が悪い、青白いと人から言われる
- めまい、立ちくらみ、ふらつき
- 頭痛、頭が重い、耳鳴り
鉄欠乏に特徴的な症状
貧血が進行すると、以下のような少し意外な症状が現れることもあります。
口角炎・舌炎
口の端が切れやすい、舌の表面がツルツルしてヒリヒリ痛む。
異食症（いしょくしょう）
氷を無性にバリバリと食べたくなります。
スプーンネイル（匙状爪）
爪が薄くなり、中央がへこんでスプーンのように反り返ってきます。
その他
集中力の低下、髪が抜けやすい、肌がカサカサする、など。
健康診断の数値（ヘモグロビン値）は基準値内でも、体内に蓄えられている「貯蔵鉄（フェリチン）」が枯渇している「かくれ貧血（潜在性鉄欠乏）」の状態でも、上記のような不調が現れることがあります。
鉄分が足りなくなる原因
では、なぜ体内の鉄分が不足してしまうのでしょうか。
原因は主に3つに分けられますが、中でも①の「出血」が最も重要です。
鉄の喪失（出血）
成人女性の場合
最も多い原因は月経（生理）です。
特に経血量が多い「過多月経」の方は、毎月大量の鉄分を失っています。
背景に、子宮筋腫や子宮内膜症といった婦人科系の病気が隠れていることもあります。
男女共通で警戒すべきこと
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、そして大腸がん、大腸ポリープ、胃がんなど、消化管からの慢性的な出血です。
特に男性や閉経後の女性に貧血が見られる場合は、この消化管からの出血を第一に疑い、原因を詳しく調べる必要があります。
鉄の需要増大
体が大きく成長する思春期や、お腹の赤ちゃんや母乳に鉄分を分け与える妊娠中・授乳中の女性は、通常より多くの鉄分が必要となり、不足しやすくなります。
鉄の摂取不足・吸収障害
極端なダイエットによる食事量の不足や、インスタント食品に偏った食生活、胃の切除手術後なども原因となります。
「サプリで補給」の前に、まず原因検索が鉄則
お伝えしたい最も大切なメッセージは、「貧血は、病名ではなく、何かの『結果』として起きている症状にすぎない」ということです。
「貧血だから、鉄分のサプリメントを飲んでおけばいい」という自己判断は、時に危険な結果を招きます。
なぜなら、もしあなたの貧血の原因が、大腸がんからの出血であった場合、サプリメントで一時的に貧血の数値だけが改善してしまうと、本来受けるべきであった精密検査の機会を逃し、がんの発見が遅れてしまう可能性があるからです。
だからこそ、貧血を指摘されたら、まずは医療機関で「なぜ鉄分が足りなくなっているのか」という根本原因を突き止めることが何よりも重要なのです。
原因不明の不調、貧血のご相談は、清澄白河ファミリークリニックへ。
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清澄白河ファミリークリニックでの診断と治療
当院では、患者様のお話を丁寧に伺い、適切な診断と治療を行います。
詳細な診断
まずは簡単な血液検査を行います。
ヘモグロビン値だけでなく、体内の「貯蔵鉄」の量を示すフェリチンの値などを調べることで、鉄欠乏性貧血かどうか、またその重症度を正確に診断します。
原因検索
貧血の原因を探るため、便潜血検査や、必要に応じて胃カメラ・大腸カメラ検査をご提案することがあります。
当院では苦痛の少ない内視鏡検査も行っております。
また、過多月経が疑われる女性には、婦人科への受診をお勧めします。
治療の中心の「鉄剤」の内服
治療は、医療用の経口鉄剤（飲み薬）の処方が基本です。
これは市販のサプリメントよりも鉄の含有量が多く、効果的に体内に鉄分を補給でき、健康保険も適用されます。
根気強い服用が大切
鉄剤を飲み始めると、まず数週間でだるさなどの自覚症状が楽になり、1～2ヶ月で血液中のヘモグロビン値が正常に戻ります。
しかし、ここで服用をやめてはいけません。
体内の「鉄の貯金箱」であるフェリチンが十分に満たされるまで、医師の指示通りに3～6ヶ月程度、根気よく服用を続けることが、再発を防ぐために非常に重要です。
患者さんへ
原因不明の「だるさ」「疲れやすさ」「めまい」は、治療によって改善できる「鉄欠負乏性貧血」という病気が原因かもしれません。
貧血を指摘されたら、まずは医療機関でその背景にある原因を調べることが極めて重要です。
気になることがあれば、御相談ください。
