過活動膀胱
過活動膀胱(OAB)とは
過活動膀胱(OAB)とは、その名の通り、膀胱が過敏になり、過剰に活動してしまう病気です。
本来、私たちの膀胱は、尿がある程度の量まで溜まってから、脳からの「排尿しなさい」という指令を受けて、はじめて収縮を始めます。
しかし、OABの状態では、まだ尿が十分に溜まっていないのにもかかわらず、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮しようとしてしまいます。
脳からの指令を待たずに、膀胱がフライングしてしまうようなイメージです。
その結果として、OABの最も特徴的な症状である「急に、我慢できないほどの強い尿意(尿意切迫感)」が起こるのです。
この病気は決して珍しいものではなく、日本の40歳以上の男女の8人に1人(1000万人以上)がOABの症状を持っているとされています。
決して恥ずかしいことではなく、誰にでも起こりうる身近な悩みです。
OABの4大症状セルフチェック
以下の4つの症状のうち、①が必須で、②~④のうち一つでも当てはまれば、あなたは過活動膀胱かもしれません。
① 尿意切迫感
急に、前触れもなく、抑えられないような強い尿意が起こりますか? これがOABの最も重要な症状です。
「トイレに行きたいな」ではなく、「今すぐ行かないと漏れる!」という、切羽詰まった感覚です。
② 頻尿
日中、トイレに行く回数が8回以上ありますか? 尿意切迫感が頻繁に起こるため、早め早めにトイレに行くようになり、結果的に回数が増えてしまいます。
③ 夜間頻尿
夜、寝てから排尿のために1回以上起きますか? 夜中に何度もトイレに起きることで睡眠が妨げられ、日中の眠気や倦怠感の原因にもなります。
④ 切迫性尿失禁
急な強い尿意のせいで、トイレに間に合わず漏れてしまうことがありますか? OABによる尿漏れは、この「切迫性尿失禁」が特徴です。
トイレの悩みはQOLに直結します。
我慢せずにご相談ください。
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OABの原因は?なぜ膀胱は過敏になるのか
OABの原因は一つではなく、様々な要因が絡み合って発症すると考えられています。
加齢
年齢とともに、膀胱の筋肉や神経の働きが変化し、排尿のコントロールが利きにくくなります。
骨盤底筋の衰え
女性では、出産や加齢により、尿道を支えるハンモックのような筋肉(骨盤底筋)が緩み、尿意を感じやすくなったり、尿漏れしやすくなったりします。
男性特有の原因
前立腺肥大症によって尿の出口が塞がれ、膀胱に常に負担がかかることで、膀胱が過敏になることがあります。
背景にある病気
脳梗塞やパーキンソン病といった神経の病気が原因となることもあります。
生活習慣
水分の摂りすぎ、カフェイン(コーヒー、緑茶など)やアルコールの過剰摂取、体の冷えなども症状を悪化させる要因です。
多くの場合、原因は一つに特定できません。
しかし、原因が何であれ、症状を和らげるための治療法があります。
OAB診断と治療
OABの診断は、主に患者様のお話(問診)から始まります。
詳細な診断
まずは、どのような時に、どのような症状で困っているか、詳しくお話を伺います。
その後、尿検査で膀胱炎など他の病気が隠れていないかを確認し、必要に応じて腹部エコー検査で膀胱に尿が残っていないか(残尿測定)を調べます。
一人ひとりに合わせた治療
OABの治療は「行動療法」と「薬物療法」が二本柱です。
行動療法(まず、ご自身でできることから始めます)
骨盤底筋体操
尿道をキュッと締める筋肉を意識的に鍛えるトレーニングです。
椅子に座った状態でも簡単にでき、尿漏れ防止に非常に効果的です。
当院では、正しいやり方を丁寧に指導いたします。
Q1. 骨盤底筋の鍛え方は?
仰向けの姿勢のまま5秒程度、尿道や肛門全体を引き上げる感じで締めます。
その後力を抜きリラックスします。
「締める」⇒「力を抜く」を1分間のサイクルで10回繰り返します。
Q2.骨盤底筋トレーニングの効果は?
実施して1か月で約3割の方、2か月以上実施で約6割の方が尿もれの症状の改善が見受けられています。
継続的におこなうことで、尿もれ改善の効果が増します。
膀胱訓練
トイレに行きたくなっても、すぐに駆け込まず、「5分だけ我慢してみる」ことから始めます。
少しずつ我慢する時間を延ばしていくことで、膀胱に溜められる尿量を増やし、過敏な状態を改善していきます。
生活指導
水分は一度にがぶ飲みせず、こまめに摂る。
就寝前の水分や、カフェイン、アルコールを控える、といった生活上の工夫も有効です。
薬物療法(行動療法と合わせて行います)
行動療法だけでは症状のコントロールが難しい場合に、お薬の力を借ります。
膀胱の異常な収縮を抑え、尿を溜めやすくすることで、OABの核心的な症状である「尿意切迫感」を和らげるお薬(抗コリン薬、β3作動薬など)を処方します。
近年は副作用の少ない使いやすいお薬も増えており、貼り薬やゼリー状のタイプもありますので、あなたの生活スタイルに合わせて選択できます。
患者さんへ
トイレが近いこと、急な尿意に怯えること、尿漏れの心配をすること。
これらは、あなたの生活の質(QOL)を著しく低下させますが、決して「年のせい」で諦めるべき症状ではありません。
過活動膀胱(OAB)は、正しい診断のもと、ご自身でできる「行動療法」と、それを力強くサポートする「薬物療法」を組み合わせることで、多くの人の症状が改善し、以前のような活動的で安心した生活を取り戻すことが可能です。
