認知症
「物忘れ」と「認知症」の違い
多くの方が最初に抱くこの疑問ですが、両者には見分けるためのポイントがあります。
| 加齢よる忘れ | 認知症による物忘れ | |
|---|---|---|
| 忘れる内容 | 体験の一部を忘れる （例：昨日の夕食の"おかず"は何だったか） |
体験そのものを丸ごと忘れる （例：夕食を"食べたこと自体"を忘れる） |
| ヒントへの反応 | 「お魚だったよ」など、ヒントがあれば思い出せる | ヒントを言っても、思い出せない |
| 自覚の有無 | 物忘れをしている自覚がある | 物忘れの自覚がないことが多い |
| 日常生活への影響 | 物忘れの自覚がないことが多い | 日常生活に支障が出てくる |
認知症の様々な初期サイン
認知症のサインは、物忘れだけではありません。
以下のような生活の中での変化に気づくことが、早期発見の鍵となります。
記憶のトラブル
新しい出来事を覚えられない。
同じことを何度も聞いたり、話したりする。
時間や場所が分からない
今日の日付や曜日が分からなくなる。
慣れた場所で道に迷う。
段取りができない
料理や買い物、公共料金の支払いなど、手順の必要なことがうまくできなくなる。
人柄の変化
以前より怒りっぽくなった、疑い深くなった、頑固になった。
逆に、好きだったことにも興味を示さず、意欲がなくなることもあります。
身なりに構わなくなる
おしゃれに気を遣わなくなったり、季節に合わない服装をしたりする。
認知症の主な種類と、治療法
認知症にはいくつかの種類があり、原因によって治療や対応が異なります。
アルツハイマー型認知症
最も多いタイプで、物忘れから始まり、ゆっくりと進行します。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血など、脳の血管の病気が原因で起こります。
症状はまだらに現れ（できることとできないことの差が激しい）、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理が進行予防に繋がります。
レビー小体型認知症
リアルな幻視（「部屋に子どもがいる」など）や、パーキンソン病に似た症状（手の震え、小股歩き）が特徴です。
認知症治療の進歩
かつて認知症は「治らない病気」というイメージが強かったかもしれませんが、治療は日々進歩しています。
治療の目的は、病気を完全になくすことではなく、「進行を緩やかにし、できるだけ長く、その人らしい穏やかな生活を送れるようにサポートすること」です。
従来の認知機能の低下を遅らせる飲み薬に加え、近年ではアルツハイマー病の原因物質に直接作用する新しいタイプの注射薬（レカネマブなど）も登場しました。
これは、ごく早期の段階で、特定の条件を満たす患者さんに対して、病気の進行そのものを抑制する効果が期待される画期的なお薬です。
ご家族のことで、少しでも「もしかして？」と感じたら、お気軽にご相談ください。
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当院の役割
当院の役割は「最初の相談窓口」として、ご本人やご家族の不安に寄り添っていきたいと考えています。
ご家族からのご相談も歓迎します
まずはご家族だけでお越しいただき、ご本人の状況や、受診への悩みなどをご相談いただくことも可能です。
初期診断と、治る病気の見極め
ご本人とご家族の両方から詳しくお話を伺い、簡単な認知機能テストや血液検査を行います。
認知症の症状は、甲状腺機能低下症など治療によって改善する病気が原因で起きていることもあります。
私たちは「かかりつけ医」として、そうした可能性を慎重に見極めます。
専門医療機関とのスムーズな連携
脳の画像検査（CT/MRI）や、より専門的な診断、最新治療薬の導入が必要と判断した場合は、専門の医療機関や認知症疾患医療センターへご紹介いたします。
診断後の伴走者
診断がついた後も、お薬の処方や副作用のチェック、生活習慣の指導などを通じて、ご本人とご家族の生活に継続的に寄り添い続けます。
ご家族の方へ｜本人と穏やかに向き合うためのヒント
ご家族の対応一つで、ご本人の心の穏やかさは大きく変わります。
- 驚かせない、急がせない、自尊心を傷つけない（３つの「ない」）
- 失敗を責めない
忘れていることを指摘したり、「さっきも言ったでしょ」と間違いを正したりするのではなく、まずは話に耳を傾け、その気持ちを受け止めてあげましょう。 - きていることに目を向ける
できなくなったことばかりに目を向けるのではなく、今できていることを認め、褒めることで、ご本人の自信に繋がります。 - 一人で、家族だけで抱え込まない
これが最も重要です。
介護は長期戦です。
地域包括支援センターやケアマネジャー、デイサービスといった公的な介護サービスを積極的に活用し、ご家族自身の時間と心の健康も大切にしてください。
患者さん・御家族へ
認知症は、早期に気づき、早期に医療や介護のサポートに繋がることで、その後のご本人とご家族の生活の質（QOL）が大きく変わる病気です。
当院は、認知症に関するあらゆる不安の「最初の相談窓口」となり、診断から治療、そして地域の介護サービスとの連携まで、ご本人とご家族に寄り添い続けます。
