膀胱炎
急性膀胱炎とは
急性膀胱炎とは、尿道から侵入した細菌が、尿を溜める袋である「膀胱」の中で増殖し、粘膜に炎症を起こす病気です。
原因となる細菌のほとんどは、特別な菌ではなく、もともと私たちの腸内にいる「大腸菌」です。
膀胱炎が圧倒的に女性に多いのには、はっきりとした理由があります。
尿道が短いから
男性の尿道が約15~20cmあるのに対し、女性の尿道は約3~5cmと非常に短く、細菌が膀胱まで簡単にたどり着けてしまいます。
尿道口の位置が近いから
女性の尿道口は、細菌が多く存在する膣や肛門と距離が近いため、細菌が侵入しやすい環境にあります。
これは体の構造上の問題であり、疲れやストレスで免疫力が落ちた時など、誰にでも起こりうる身近な病気なのです。
特徴的な症状セルフチェック
膀胱炎の症状は非常に特徴的です。
以下の項目に当てはまるものがあれば、膀胱炎の可能性が高いと考えられます。
頻尿(トイレが近い)
1日に10回以上トイレに行く。
30分も我慢できない。
夜中にトイレで何度も目が覚める。
排尿時痛
特に排尿の終わりに、尿道や下腹部がツーンとしたり、焼けるように痛んだりする。
特に排尿の終わりに、尿道や下腹部がツーンとしたり、焼けるように痛んだりする。
残尿感
排尿後も、まだ尿が残っているようなスッキリしない感じが続く。
尿の混濁・血尿
尿が白く濁っている。
炎症によって生じた白血球や細菌が混じるためです。
ひどくなると、膀胱の粘膜から出血し、尿に血が混じってピンク色や真っ赤になることもあります(血尿)。
下腹部痛
膀胱のある、恥骨(ちこつ)の上のあたりに、重いような、鈍いような痛みや違和感がある。
つらい膀胱炎の症状、我慢せずにお気軽にご相談ください。
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膀胱炎を放っておくとどうなるか
膀胱で増殖した細菌が、尿の通り道(尿管)を逆流して、腎臓にまで到達してしまうことがあります。
腎臓で細菌が感染・炎症を起こした状態が**『腎盂腎炎』**です。
腎盂腎炎にまで進行すると、頻尿や排尿時痛といった膀胱炎の症状に加えて、
- 38℃以上の高熱
- 寒気や体中の震え(悪寒戦慄)
- 腰や背中の片側(または両側)を叩くと響くような強い痛み
- 吐き気・嘔吐
といった重い全身症状が現れます。
この状態になると、点滴で抗生物質を投与する治療が必要になることが多く、治療期間も長引いてしまいます。
そうなる前に、膀胱炎の段階でしっかりと治しておくことが何よりも大切です。
膀胱炎の診断と治療
膀胱炎の診断と治療は、非常にシンプルであり、患者様への負担も少なく済みます。
診断は「尿検査」が基本です
ご来院いただいたら、まずは採尿カップに尿を採っていただきます。
その尿を試験紙や顕微鏡で調べるだけで、尿の中に炎症のサインである白血球や、原因である細菌がいるかどうかを、その場で数分で確認することができます。
治療は「抗生物質」の内服です
診断の結果、急性膀胱炎であれば、原因菌に効果のある**「抗生物質」**を処方します。
通常、3~5日間、医師の指示通りに服用すれば、つらい症状は1~2日で劇的に改善していきます。
ここで非常に重要なのが、症状が良くなったと感じても、処方された抗生物質は必ず最後まで飲み切ることです。
症状が消えても、菌がまだ膀胱内に生き残っている可能性があります。
ここで服用をやめてしまうと、生き残った菌が再び増殖してすぐに再発したり、薬が効きにくい「耐性菌」を生み出す原因になったりします。
今日からできる膀胱炎の予防法
膀胱炎は、一度かかると繰り返しやすい、という特徴があります。
再発を防ぐために、日常生活で以下の点をぜひ心がけてみてください。
水分をたくさん摂る
最も効果的な予防法です。
1日に1.5~2リットルを目安に水分を摂り、尿量を増やして、膀胱内の細菌をこまめに洗い流しましょう。
トイレを我慢しない
行きたくなったら、すぐにトイレに行く習慣をつけましょう。
膀胱に尿が溜まっている時間が長いほど、細菌が繁殖する時間を与えてしまいます。
体を冷やさない
特に下半身を冷やすと、骨盤内の血行が悪くなり、免疫力が低下します。
清潔を保ち、正しく拭く
排便後は、細菌を尿道口に運んでしまわないよう、必ず「前から後ろ」に向かって拭くようにしましょう。
性行為の後は排尿する
性行為によって尿道口に付着した細菌を、排尿によって洗い流すことが有効です。
疲れやストレスを溜めない
規則正しい生活を送り、十分な休息をとって、免疫力を高く保ちましょう。
患者さんへ
膀胱炎の頻尿や排尿時の痛みは、日常生活の質(QOL)を大きく下げる、非常につらい症状です。
決して我慢すべきものではありません。
膀胱炎は、適切な抗生物質で治療すれば、速やかに、そしてきちんと治る病気です。
膀胱炎で怖いのは腎盂腎炎になり、発熱や嘔吐、激しい腹痛にまで至ることです。
排尿時痛や頻尿など、お悩みの症状が出たときはぜひ御相談ください。
