肺炎
肺炎とは
「風邪」「気管支炎」「肺炎」、これらは全て咳や熱といった似た症状が出ますが、炎症が起きている「場所」と「深刻度」が全く異なります。
風邪(上気道炎)
炎症の主戦場は、鼻やのどといった「上気道」です。
気管支炎
炎症がもう少し奥に進み、のどと肺を繋ぐ空気の通り道である「気管支」で起きています。
肺炎
炎症がさらに体の深部、酸素と二酸化炭素のガス交換を行う最も重要な場所である「肺胞」にまで達してしまった状態です。
肺炎は体の最も重要なガス交換の場で火事が起きているようなものなので、呼吸機能が直接的にダメージを受け、全身に酸素が十分に行き渡らなくなり、症状が重くなりやすいのです。
肺炎を疑うサイン(セルフチェック)
以下のサインが一つでも当てはまる場合は、肺炎の可能性を考えて、速やかに医療機関を受診してください。
- 38℃以上の高熱が4日以上続いている
- 黄色、緑色、鉄サビ色など、色のついた粘り気のある痰が頻繁に出る
- 激しい咳が続き、息を吸ったり咳き込んだりすると胸が痛む
- 安静にしていても呼吸がハアハアと速い、息苦しい感じがする
- 顔色が悪く、唇や爪が紫色っぽく見える
- 体が鉛のように重く、ぐったりして起き上がれない
特にご高齢の方は、高熱や激しい咳といった典型的な症状が出にくく、「なんとなく元気がない」「食欲がない」「意識がはっきりしない」といった症状が肺炎のサインであること(誤嚥性肺炎など)もあり、注意が必要です。
肺炎の診断と治療
「肺炎かもしれない」とご来院された患者様には、正確な診断のために以下の検査などを組み合わせて行います。
診断プロセス
問診・聴診
症状の詳しい経過をお伺いし、聴診器で胸の音を確認します。
肺炎の場合、「パチパチ」「ゴロゴロ」といった特徴的な雑音が聞こえることがあります。
胸部レントゲン検査
肺炎の診断において最も重要な検査です。
肺に炎症が起きていると、その部分がレントゲン写真で白く写ります。
この「影」の有無や広がりを確認します。
血液検査
体内でどれくらい炎症が起きているか(CRP値や白血球数)を客観的な数値で把握します。
また、全身の酸素状態(動脈血酸素飽和度)も指先で簡単に測定します。
原因微生物の特定
痰を調べて原因菌を探したり、インフルエンザや新型コロナウイルスなど、肺炎のきっかけとなる感染症の迅速検査を行ったりします。
治療方針
診断の結果、肺炎と判断された場合は、速やかに治療を開始します。
原因に対する治療(抗生物質)
細菌性肺炎が原因の多くを占めるため、原因菌に効果のある「抗生物質」を投与します。
軽症であれば飲み薬、中等症以上や食事が摂れない場合は点滴での投与となります。
症状を和らげる治療(対症療法)
つらい症状を楽にするため、咳を鎮める薬、痰を出しやすくする薬、熱を下げる薬などを合わせて処方します。
症状の重さや年齢、基礎疾患の有無などを総合的に判断し、ご自宅での治療が可能か、入院が必要かを的確に見極めます。
入院が必要な場合は、地域の連携している高度医療機関へ速やかにご紹介する体制を整えていますので、ご安心ください。
息苦しさや高熱でお困りの方は、我慢せずご相談ください。
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肺炎は「治す」だけでなく「防ぐ」肺炎球菌ワクチンとは?
肺炎は治療も大切ですが、それ以上に「かからないこと」「かかっても重症化させないこと」が重要です。
そのための強力な武器がワクチンです。
肺炎球菌ワクチン
成人の肺炎の原因として最も多いのが「肺炎球菌」という細菌です。
この肺炎球菌による肺炎や、それが引き起こす重い合併症を予防するのが「肺炎球菌ワクチン」です。
定期接種
65歳になる年度の方などを対象に、公費助成で接種できます。
江東区から案内が届きます。
任意接種
定期接種の対象でない方でも、自費で接種することが可能です。
特に、慢性的な持病をお持ちの65歳未満の方や、66歳以上の方におすすめです。
インフルエンザワクチン
インフルエンザにかかると、気道の粘膜がダメージを受け、そこから細菌が侵入して二次性の肺炎を起こしやすくなります。
毎年のインフルエンザワクチン接種は、結果的に肺炎の予防にも繋がる非常に大切な対策です。
当院では、これらのワクチン接種も積極的に行っております。
ご自身の、そして大切なご家族の健康を守るために、ぜひワクチンの接種をご検討ください。
患者さんへ
肺炎の初期症状は風邪と見分けがつきにくく、様子を見ているうちに重症化してしまうケースが少なくありません。
胸部レントゲンではじめて、肺炎とわかることもあります。
肺炎は適切な治療でほとんどが改善します。
また、肺炎にかかりにくいようにするために、ワクチン接種(肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、コロナワクチンなど)はとても有効な対策です。
お困りの症状があれば、ご相談ください。
