片頭痛
片頭痛の特徴とサイン
頭痛には様々なタイプがありますが、「片頭痛」には以下のようなはっきりとした特徴があります。
痛みの性質
「ズキンズキン」「ガンガン」と脈打つような拍動性の痛みが特徴です。
痛みの場所
頭の片側(時に両側)のこめかみから目のあたりにかけて痛むことが多いです。
痛みの強さ
日常生活に著しい支障をきたす、中等度から重度の痛みです。
随伴症状
吐き気や、実際に嘔吐してしまうことも少なくありません。
また、発作中は光や音、匂いに非常に敏感になります。
日常生活への影響
階段の上り下りなど、体を動かすと痛みが悪化するため、暗い、静かな部屋でじっとしていたくなります。
これに対し、頭全体がギューッと締め付けられるような重い痛みが続く「緊張型頭痛」とは、痛みの性質や対処法が異なります。
頭痛の「予兆」と「前兆」
片頭痛の方の中には、頭痛が始まる前に特徴的なサインが現れる方がいます。
予兆
頭痛が始まる数時間~1日前に、理由のない眠気や生あくび、気分の変動(イライラしたり、逆にハイになったり)、首のこり、特定のものが無性に食べたくなる、といったサインです。
前兆
頭痛が始まる直前(5~60分ほど前)に、目の前にギザギザした光や稲妻のような光が見える(閃輝暗点:せんきあんてん)、視野の一部が見えにくくなる、といった視覚的な症状です。
これらは「前兆のある片頭痛」と呼ばれます。
これらのサインに気づくことができれば、早めの対処が可能になります。
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片頭痛の原因と誘因
片頭痛は、「気合が足りない」といった精神的なものではなく、脳の機能的な異常によって起こります。
何らかの刺激によって、脳の血管が拡張し、その周りにある「三叉神経(さんさしんけい)」という大きな神経が刺激されます。
すると、その神経から痛みや炎症を引き起こす物質(カルシトニン遺伝子関連ペプチド:CGRP)が放出され、血管の周りに炎症が広がり、激しい拍動性の痛みや吐き気が引き起こされると考えられています。
- 発作の引き金となる「誘因」は人それぞれですが、以下のようなものが知られています。
- ストレス(あるいは、仕事などのストレスから解放された週末など)
- 睡眠不足、または寝過ぎ
- 天候や気圧の変化
- 女性ホルモンの変動(月経周期に関連する片頭痛)
- 特定の食べ物(チョコレート、チーズ、赤ワインなど)
- 強い光や音、特定の匂い
当院の片頭痛治療
片頭痛の治療は、ただ痛みを抑えるだけではありません。
「発作の苦痛を素早く取り除くこと」と「発作そのものを起こしにくくすること」の、二段構えでアプローチします。
急性期治療(起きてしまった頭痛を、素早く確実に鎮める)
まず、考慮したいのがNSAIDs(ロキソニン)です。
軽度~中等度の片頭痛に使用されます。
ロキソニンでは十分な効果が得られない方のために、専門的なお薬があります。
その代表がトリプタン製剤です。
これは片頭痛の特効薬ともいえるお薬で、拡張した脳の血管を収縮させ、痛みの原因物質の放出を抑えることで、痛みの根本に作用します。
痛みが本格化する前の、できるだけ早いタイミングで服用するのが、効果を最大限に引き出すコツです。
さらにトリプタン製剤でも反応が鈍い場合にはセロトニン1F受容体拮抗薬であるレイボーがあります。
レイボーは、脳内の三叉神経系にあるセロトニン1F受容体に選択的に作用し、三叉神経からの神経炎症物質の放出を抑制し、痛みの発生をブロックします。
レイボーは血管を収縮せずに神経の過活動を抑えるため、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞のリスクが低く安全性も高いです。
予防治療(頭痛発作そのものを起こしにくくする)
「頭痛のせいで、月の何分の一かは寝込んでしまう…」という方には、頭痛の頻度や程度を軽減させるための「予防治療」が有効です。
- 頭痛の頻度が多い(月に2回以上、あるいは月に合計3日以上、日常生活に支障がある)
- 急性期治療薬が効きにくい、または副作用で使えない
- このままでは生活の質が著しく低い
このような場合には、毎日お薬を服用することで、頭痛の回数を半分以下に減らすことを目指します。
当院では漢方薬である五苓散をお勧めしています。
五苓散は頭部の利尿作用、血管収縮・拡張のバランス調整、中枢神経の安定化などにより気圧・水分バランスの乱れから頭痛が生じる方に効果を発揮します。
- 気圧の変化(雨の日・台風など)で頭痛が出る
- 吐き気や嘔吐を伴う頭痛が多い
- 水分をとってもむくみやすい
- 冷えやすく、めまい・立ちくらみがある
- 乗り物酔いしやすい
のような症状が生じやすい方に適しています。
日常生活でできること
お薬による治療と合わせて、ご自身の頭痛と向き合うことも大切です。
頭痛ダイアリーのススメ
いつ、どんな状況で頭痛が起きたか、食事や睡眠、天候などを記録することで、ご自身の頭痛のパターンや誘因が見えてきます。
これは、治療方針を決める上でも非常に役立ちます。
発作が起きた時の対処法
まずは急性期治療薬を服用し、できるだけ暗くて静かな、涼しい部屋で休みましょう。
痛む部分を冷たいタオルなどで冷やすと、血管が収縮し、痛みが和らぐことがあります。
(温めると逆効果なので注意してください)
患者さんへ
寝込むほどのつらい片頭痛は、「頭痛持ち」という体質や「気合」の問題で片付けてよいものではありません。
適切な治療でコントロールできる病気です。
市販薬だけで我慢する生活から抜け出し、専門医に相談することで、トリプタン製剤や、発作そのものを減らす「予防治療」という、より効果的で希望のある選択肢があります。
片頭痛でお悩みの方は御相談ください。
