慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病(CKD)とは
腎臓は、背中の腰のあたりに左右一対ある、そら豆のような形をした臓器です。
その主な働きは、血液をろ過して体内の老廃物や余分な塩分・水分を尿として排泄する、体の中の高性能なフィルターのような役割です。
その他にも、血圧の調整や、血液を作るホルモンの分泌など、生命維持に欠かせない多くの重要な働きを担っています。
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)とは、この腎臓の働き(フィルター機能)が、何らかの原因で長期間(3ヶ月以上)にわたって低下した状態(eGFR < 60)、または、尿たんぱくが出続けるといった腎臓の障害を示すサインが続いている状態の総称です。
日本の成人8人に1人がCKD患者と推計されており、もはや「新たな国民病」とも言える、誰にとっても他人事ではない身近な病気なのです。
CKDの二大原因は「高血圧」と「糖尿病」
CKDを引き起こし、進行させる最大の原因は、高血圧と糖尿病という、ありふれた生活習慣病です。
高血圧
長期間、高い圧力がかかり続けることで、腎臓の糸球体が肥厚・狭窄するため糸球体の血流が低下します。
その結果糸球体が硬化したり、壊死したりするため糸球体濾過量(eGFR)の低下をもたらします。
糖尿病
高血糖の状態が続くと、腎臓の輸入細動脈が拡張し、糸球体内圧が上昇します。
その結果糸球体から過剰な血液の濾過が生じるため、糸球体に負荷がかかり、糸球体濾過量(eGFR)の低下をもたらします。
つまり、高血圧や糖尿病の治療をしっかりと行うことが、そのまま腎臓を守ることに直結すします。
CKDが招く合併症
CKDを「症状がないから」と放置した場合、主に2つの深刻な事態を招く危険性があります。
末期腎不全(透析・腎移植)
腎機能が正常の15%以下まで低下すると、腎臓はフィルターとしての役割をほとんど果たせなくなり、体内に老廃物や毒素が溜まってしまいます(尿毒症)。
こうなると、命を維持するためには、機械で血液をきれいにする「人工透析」を週に3回、1回4時間ほどかけて行うか、腎移植を受けるしかありません。
透析導入は、ご自身の生活に非常に大きな制約をもたらします。
心筋梗塞・脳卒中
CKDのもう一つの怖さは、腎臓そのものの問題だけにとどまらないことです。
CKD患者さんは、腎機能が正常な人と比べて、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる心血管疾患の発症リスクが何倍にも高まることが分かっています。
これは、腎機能の低下が、動脈硬化を強力に促進してしまうためです。
「腎臓を守ることは、心臓と脳を守ること」でもあります。
あなたの腎臓は大丈夫?健康診断結果の正しい見方
健康診断の結果表がお手元にあれば、ぜひ確認してみてください。
eGFR(推算糸球体濾過量)
血液検査の項目にある「クレアチニン(Cr)」の値と、あなたの年齢・性別から計算される数値です。
これは「腎臓の働きが、健康な状態の何%か」を示す指標と考えてください。
基準値は60以上です。
もし、この数値が60を下回っていたら、腎機能が低下しているサインです。
尿たんぱく
健康な腎臓のフィルターは、体に必要なタンパク質を尿に漏らしません。
尿にたんぱくが漏れ出ている(検査結果が±や+)のは、フィルターが傷んでいる証拠です。
これらの異常を指摘されたら、数少ない貴重なSOSサインです。
決して見過ごさないでください。
健診結果についてご不安な方は、結果をご持参の上、お気軽にご相談ください。
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当院の治療
一度悪くなってしまった腎機能を完全に元に戻すことは、現在の医療では困難です。
しかし、適切な治療と生活習慣の管理によって、腎機能の低下するスピードを緩やかにし、透析への移行を回避したり、大幅に先延ばししたりすることは十分に可能です。
治療の基本である「原因疾患の管理」と「生活習慣の改善」
高血圧・糖尿病の治療: 降圧薬や血糖降下薬を、腎機能に配慮しながら適切に調整し、厳格なコントロールを目指します。
食事療法
減塩は、血圧を下げ、腎臓への負担を軽くするための最も重要な基本です。
1日6g未満を目標にします。
進行度に応じて、たんぱく質やカリウム、リンの制限が必要になることもあります。
薬物療法
近年、腎臓を保護する効果が科学的に証明された新しいお薬(SGLT2阻害薬など)も登場し、治療の選択肢は増えています。
患者様の状態に合わせて、最適な薬物療法を行います。
生活習慣の指導
禁煙、適度な運動、肥満の解消など、ご自身で取り組めることについても、具体的な目標を一緒に設定し、サポートします。
患者さんへ
慢性腎臓病(CKD)は、自覚症状がないまま静かに進行する病気です。
しかし、見方を変えれば、健康診断という絶好の機会に、その危険信号を早期にキャッチできる病気でもあります。
そのサインを見過ごさず、かかりつけ医のもとで適切に管理を始めれば、健康で自立した生活を長く続けることができます。
当院は、CKDの原因となる生活習慣病の管理から、専門的な腎臓保護治療、食事・生活指導までトータルでサポート致します。
eGFRの低下がみられたら、御相談ください。
