慢性胃炎
慢性胃炎とは
慢性胃炎とは、その名の通り、胃の粘膜に長期間にわたって炎症が続く状態を指します。
慢性的な炎症にさらされた胃の粘膜は、徐々にその厚みを失い、薄く痩せ細ってしまいます。
この状態を「萎縮(いしゅく)」と言い、いわば胃の粘膜が年齢以上に「老化」してしまった状態です。
慢性胃炎(特にピロリ菌感染)によって、長期間炎症が続くと、胃の粘膜が薄くなり、腺細胞(胃酸や粘液を分泌する細胞)も減少します。
結果として、胃の内壁が"ツルツル"になり、本来の分泌・修復能力が低下し、防御因子が弱くなります。
さらに、萎縮が進行した粘膜は、本来胃には存在しないはずの腸の粘膜に似たものに置き換わってしまうことがあります。
これを「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」と呼び、この状態になった粘膜は、胃がんが発生しやすい「畑」と考えられています。
慢性胃炎の最大の原因は「ピロリ菌感染」
では、なぜ胃の粘膜に慢性的な炎症が起きてしまうのでしょうか。
その原因の約8割は、「ヘリコバクター・ピロリ菌」の感染にあることが分かっています。
ピロリ菌は、強力な胃酸の中でも生きられる特殊な細菌で、一度胃に棲みつくと、持続的に炎症を引き起こし、胃の「萎縮」と「老化」を強力に促進します。
その他、ストレス、過度の飲酒、喫煙、加齢なども胃炎を悪化させる要因となります。
なぜ、慢性胃炎を放置してはいけないのか?
慢性胃炎を単なる「胃の不調」と考えてはいけない最大の理由は、胃がんへと繋がる一連のステップの重要な段階だからです。
胃がんが発生するまでには、以下のような流れがあることが知られています。
【正常な胃】 → 【ピロリ菌感染など】 → 【慢性胃炎(萎縮性胃炎)】 → 【腸上皮化生】 → 【胃がんの発生】
つまり、現在の「慢性胃炎」という状態は、胃がんへの階段をすでに数段上っている状態とも言えます。
特に自覚症状がない場合でも、胃の中では静かにリスクが進行している可能性があります。
「症状がないから大丈夫」という考えは、非常に危険です。
胃の不調や、胃がんリスクが気になる方は、お早めにご相談ください。
WEBでのご予約はこちら
早期胃がんを診断するには胃カメラ検査が必要
では、自分の胃が今どのような状態にあるのか、萎縮はどれくらい進んでいるのか、そして胃がんのリスクはどの程度なのか。
それを正確に知るための方法が「胃カメラ検査(内視鏡)検査」です。
胃カメラ検査では、医師がモニターを通して、胃の粘膜を隅々まで直接観察します。
- 胃炎や萎縮の程度を正確に診断
- ポリープや、ごく早期のがんを発見
- ピロリ菌感染の有無を検査
- 疑わしい部分があれば、組織を採取して確定診断
といった、非常に多くの重要な情報を得ることができます。
例えば、胃カメラ観察で胃の半分以上が萎縮の状態の時、胃がんリスクが高まるという研究結果があります。
また、病理検査で腸上皮化生の所見がみられると、胃がんリスクが上昇します。
このように、胃カメラ検査で多くの情報を得ることができ、胃がんリスクを評価することができます。
当院では、鎮静剤(セデーション)を使用し、ウトウトと眠っている間に受けられる苦痛の少ない胃カメラ検査を実施しておりますので、安心して検査に臨んでいただけます。
当院の慢性胃炎治療
慢性胃炎の治療は、不快な症状を和らげるだけでなく、将来の胃がんリスクを低減させることを目的とします。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌の感染が確認された場合、これが最も重要で根本的な治療です。
1週間の服薬でピロリ菌を除菌することにより、胃の炎症の進行にブレーキをかけ、その後の胃がん発生リスクを大幅に下げることができます。
薬物療法
胃もたれや胃痛などの症状が強い場合には、胃酸の分泌を抑える薬、胃の粘膜を保護・修復する薬、胃の運動機能を改善する薬などを、症状に合わせて処方します。
胃の薬物療法は、症状を改善させるだけでなく、胃の慢性炎症を改善させる目的もあります。
胃の慢性的な炎症により胃がんが発生しますので、胃酸の分泌を薬物で抑えることは胃がん発症リスクを下げることにつながります。
最重要 治療後の定期的な検査
ピロリ菌の除菌に成功しても、一度進んでしまった胃の萎縮や腸上皮化生は、残念ながら完全には元に戻りません。
つまり、胃がんのリスクがゼロになるわけではないのです。
だからこそ、慢性胃炎、特に萎縮性胃炎と診断された方や、ピロリ菌の除菌治療を受けたことがある方は年に1回は定期的に胃カメラ検査を受け、内視鏡専門医によるチェックを受け続けることが、胃がんの早期発見のために重要です。
日常生活でのセルフケア
お薬による治療と合わせて、日々の生活で胃に負担をかけない工夫も大切です。
食事
暴飲暴食を避け、腹八分目を心がけましょう。
よく噛んでゆっくり食べ、香辛料の強いもの、熱すぎる・冷たすぎるもの、脂肪分の多い食事は控えめに。
生活習慣
ストレスは胃酸の分泌を乱します。
自分なりのリラックス法を見つけ、十分な睡眠をとりましょう。
もちろん、禁煙と節酒も非常に重要です。
患者さんへ
胃カメラによる正確な診断から、ピロリ菌除菌、そして胃がん予防のための定期的なフォローアップまで患者さんの健康をサポート致します。
胃の調子が悪い、健診で萎縮が指摘されたなど、気になることがあれば是非御相談ください。
