帯状疱疹
帯状疱疹とは
帯状疱疹の原因は、実は多くの人が子どもの頃にかかったことのある「水ぼうそう(水痘)のウイルス」です。
水ぼうそうが治った後も、このウイルスは体から消えてなくなるわけではなく、背骨の近くにある神経の根元(神経節)に、息をひそめて何十年も潜伏しています。
そして、加齢、仕事の疲れ、ストレス、病気などが引き金となって体の免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び目を覚まし、神経を伝って皮膚へと移動し、帯状疱疹として発症するのです。
つまり、水ぼうそうにかかったことがある人なら、誰でも帯状疱疹になる可能性があるのです。
決して特別な病気ではありません。
帯状疱疹の典型的な症状と経過
帯状疱疹の症状は、特徴的な経過をたどって進行します。
痛み先行期(前駆痛)
まず、皮膚にはまだ何も変化がない段階で、体の左右どちらか片側の神経に沿って、ピリピリ、チクチク、ズキズキといった痛みや、皮膚の違和感が現れます。
この痛みは数日から1週間ほど続くことがあります。
発疹期
痛みが続いていたのと同じ場所に、帯のように連なった赤い発疹(紅斑)と、その上に小さな水ぶくれ(水疱)がいくつも現れます。
体の左右どちらか片側にしか症状が出ないことが、この病気の最大の特徴です。
胸から背中、お腹、顔、頭、手足など、神経が通っている場所ならどこにでも発症する可能性があります。
回復期
水ぶくれは次第に膿を持ち、やがて破れてただれた状態(びらん)になり、最終的にはかさぶたとなって自然に剥がれ落ちます。
通常、皮膚の症状が完全に治るまでには2~4週間ほどかかります。
治療の鍵は「発疹後72時間」。
後遺症を防ぐためのルール
ここが、この記事で最もお伝えしたい重要なポイントです。
帯状疱疹の治療は、時間との勝負です。
帯状疱疹の治療の中心は、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」です。
この薬は、つらい皮膚症状や痛みを軽くし、治るまでの期間を短くする効果があります。
そして何より、最も怖い後遺症である「帯状疱疹後神経痛(PHN)」の発症リスクを大幅に減らすことができます。
この効果を最大限に引き出すための絶対的なルール、それが「発疹が出てから72時間(3日)以内に抗ウイルス薬を飲み始めること」です。
つらい痛みや発疹でお困りの方は、すぐに当院へご相談ください。
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最も怖い合併症「帯状疱疹後神経痛(PHN)」
帯状疱疹で最も恐れられているのが、この「帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia: PHN)」という後遺症です。
これは、皮膚の発疹や水ぶくれがすっかり治った後も、3ヶ月以上にわたって、ウイルスによって傷つけられた神経の痛みが残ってしまう状態を指します。
「焼けるような痛み」「電気が走るような鋭い痛み」「締め付けられるような痛み」など、その痛みは非常に強く、日常生活に深刻な影響を及ぼします。
夜も眠れず、うつ状態になってしまう方も少なくありません。
特に、高齢の方、皮膚症状や最初の痛みが重症だった方は、PHNに移行するリスクが高いと言われています。
このつらい後遺症に苦しまないためにも、何度も強調しますが「発疹後72時間以内の治療開始」が何よりも重要なのです。
当院での帯状疱疹治療の特徴
当院では、帯状疱疹が疑われる患者様に対し、迅速かつ的確な治療を提供します。
迅速な診断と治療開始
特徴的な症状から素早く診断し、一刻も早く抗ウイルス薬による治療を開始します。
積極的な痛みへの対処
帯状疱疹の痛みは非常につらいものです。
我慢せずに済むよう、抗ウイルス薬に加え、痛み止めの飲み薬(鎮痛薬)などを適切に処方し、急性期の苦痛を和らげます。
合併症への警戒
特に顔、目、耳の周りに帯状疱疹ができた場合は、角膜炎、結膜炎による視力障害、顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)、難聴などの重い合併症を引き起こす危険があります。
このような場合は、より慎重な管理と、必要に応じた専門医との連携を行います。
日常生活での注意点
「この病気は周りの人にうつりますか?」というご質問をよく受けます。
帯状疱疹として、他の人にうつることはありません。
ただし、水ぶくれの中には水ぼうそうのウイルスがいます。
そのため、まだ水ぼうそうにかかったことがない人(特に小さな赤ちゃん)や、免疫が低下している人、妊婦さんなどには、水ぼうそうとして感染させてしまう可能性があります。
水ぶくれがすべて乾いてかさぶたになるまでは、以下の点にご注意ください。
- 患部をガーゼなどで覆い、直接触れないようにする。
- 小さな子どもや妊婦との接触はなるべく避ける。
- 患者さんとはタオルを別にする。
- 入浴はシャワー程度にし、患部はこすらないようにする。
帯状疱疹ワクチンという選択肢
一度帯状疱疹になると、二度とあのつらい思いはしたくない、と誰もが思うはずです。
現在、50歳以上の方は、帯状疱疹の発症を予防し、もし発症しても症状を軽く済ませるための「帯状疱疹ワクチン」を接種することができます。
ワクチンには2種類(不活化ワクチンと生ワクチン)あり、それぞれに特徴があります。
当院では不活化ワクチンの「シングリックス」の接種をお勧めしております。
ワクチンは発症予防効果率が重要です。
シングリックスの発症予防効果率は、90%以上と非常に高い特徴があります。
一方、生ワクチンは50から60%です。
シングリックスは免疫抑制状態の人でも使用可能(がん治療中、糖尿病、ステロイド使用者など)ですが、生ワクチンは免疫が低下している人には使用できません。
帯状疱疹ワクチンのご相談・接種も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
患者さんへ
体の片側に現れた原因不明の痛み、そして帯状の赤い発疹と水ぶくれ。
それは、帯状疱疹の可能性があります。
帯状疱疹の治療は、まさに時間との勝負です。
特に顔面に生じた場合には緊急を要します。
「もしかして?」と思ったら、ためらわずに、今すぐ私たち専門家にご相談ください。
