呼吸苦
息苦しさの主な3つの原因
「息苦しさ」と一言でいっても、その原因は一つではありません。
主に、①呼吸器(肺や気管支)、②循環器(心臓や血管)、そして③その他の系統に分けられます。
① 呼吸器の病気(肺や気管支の問題)
空気に直接関わる臓器のトラブルです。
気管支喘息
アレルギーなどが原因で気道が狭くなり、ヒューヒュー、ゼーゼーという音(喘鳴)とともに発作的に息苦しくなります。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
主に長年の喫煙が原因で肺の機能が徐々に低下し、特に体を動かした時に息切れがします。
「タバコ病」とも呼ばれます。
肺炎・気管支炎
肺や気管支の感染症で、咳や痰、発熱とともに息苦しさを感じます。
気胸
肺に突然穴が開き、肺がしぼんでしまう病気です。
突然の胸の痛みと息苦しさが特徴です。
② 循環器の病気(心臓や血管の問題)
全身に血液(酸素)を送るポンプや配管のトラブルです。
心不全
心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなった結果、肺に水が溜まってしまう(肺うっ血)状態です。
横になると苦しく、体を起こすと少し楽になる(起坐呼吸)のが特徴的なサインです。
狭心症・心筋梗塞
心臓自身の血管が狭くなったり詰まったりする病気で、胸の痛みとともに息苦しさを感じます。
肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)
足などにできた血の塊(血栓)が、肺の動脈に詰まってしまう、命に関わる緊急疾患です。
突然の胸痛と呼吸困難が起こります。
その他の原因
貧血
血液中で酸素を運ぶ役割のヘモグロビンが不足するため、全身が酸欠状態になり、少し動いただけでも息切れがします。
精神的な要因
パニック障害や過換気症候群など、強い不安やストレスが引き金となって、息が吸えない、呼吸が速く浅くなるといった症状が現れます。
重要 一刻を争う「危険な息苦しさ」とは?
以下のような症状が見られる場合は、心筋梗塞や肺塞栓、重症心不全といった、一刻を争う病気の可能性があります。
ためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。
- 突然始まった、胸の激しい痛みを伴う息苦しさ
- 安静にしていても呼吸が苦しい、横になれない
- 唇や指先の色が、血の気が引いたように紫色っぽい(チアノーゼ)
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が薄い
- 顔面蒼白で、冷や汗をかいている
「年のせい」と片付けないで。
ゆっくり進行する息切れに潜む病気
突然の呼吸困難だけでなく、徐々に進行する息切れ(労作時息切れ)にも注意が必要です。
「去年より、駅の階段を上るのがつらくなった」「以前は平気だった坂道で、息切れして一休みするようになった」 こうした変化を、「年のせいだから」と片付けてしまいがちです。
しかし、これこそが心不全やCOPDといった、ゆっくりと進行する慢性疾患の最も早期のサインであることが非常に多いのです。
この段階で異変に気づき、医療機関を受診することが、病気の進行を食い止め、あなたの将来の健康寿命を大きく左右します。
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当院の呼吸苦の診療
当院は「息苦しさの総合相談窓口」として、多角的な視点でその原因を探ります。
詳細な問診と身体診察
いつから、どんな時に息苦しいか、他の症状(咳、胸痛、動悸、足のむくみなど)の有無、これまでの病歴、喫煙歴などを詳しくお伺いします。
そして、胸の音や心臓の音を聴診し、足のむくみなど、全身の状態を丁寧に診察します。
原因を絞り込むための各種検査
胸部レントゲン検査
肺炎や気胸、心臓の大きさ(心拡大)、肺のうっ血などを確認します。
心電図検査
不整脈や心筋梗塞、狭心症などの心臓の病気の兆候がないかを調べます。
血液検査
心不全の程度を示すマーカー(BNPなど)や、貧血の有無、炎症反応などを評価します。
パルスオキシメーター
指先で、体に十分な酸素が行き渡っているか(動脈血酸素飽和度)を、痛みなく簡単に測定します。
診断と治療、そして他の専門医への連携
これらの検査結果を総合的に判断し、息苦しさの原因を突き止めます。
気管支喘息やCOPD、軽症の心不全、貧血など、当院で治療可能な疾患については、速やかに治療を開始します。
そして、心筋梗塞や重症心不全など、入院や専門的な治療が必要と判断した場合は、速やかに地域の基幹病院へご紹介します。
患者さんへ
「息苦しさ」は、体からの最も重要な警告の一つです。
特に、これまでになかった息切れを感じたり、徐々に悪化していると感じたりした場合は、まずは一度にご相談ください。
これからも「地域のプライマリ・ケア医」として、皆様の健康をサポートいたします。
