前立腺肥大症
前立腺肥大症とは
まず「前立腺」とは、男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下に位置し、尿道を取り囲むように存在しています。
大きさはクルミの実ほどです。
前立腺肥大症とは、この前立腺が加齢とともに、主に男性ホルモンの影響を受けて内側から徐々に大きくなり、中心を通っている尿道を圧迫することで、様々な排尿トラブルを引き起こす病気です。
これは「がん」のような悪性の腫瘍ではなく、あくまで良性の組織が増えた状態であり、50歳以上の男性の半数以上にみられる、ありふれた変化です。
これって前立腺肥大症?気になる症状セルフチェック
前立腺肥大症の症状は、大きく3つのタイプに分けられます。
ご自身の症状と照らし合わせてみてください。
尿を溜める時の症状(蓄尿症状)
頻尿・夜間頻尿
昼間に何度もトイレに行きたくなる。
特に、夜寝てから1回以上トイレに起きるのは、QOLを低下させる大きな原因です。
尿意切迫感
急に強い尿意を感じ、我慢するのがつらい、漏れそうで焦ることがある。
尿を出す時の症状(排尿症状)
尿勢低下
尿の勢いが弱く、チョロチョロとしか出ない。
排尿困難
尿が出始めるまでに時間がかかる。
お腹に力を入れないと尿が出にくい。
排尿時間の延長
排尿に時間がかかるようになった。
尿を出し終わった後の症状(排尿後症状)
残尿感
排尿後も、まだ膀胱に尿が残っているようなスッキリしない感じがする。
排尿後尿滴下
排尿が終わったと思って下着を上げた後で、尿がポタポタと漏れてしまう。
これらの症状に心当たりがあれば、一度専門家にご相談ください。
WEBでのご予約はこちら
合併症のリスク
無治療の前立腺肥大症では、以下のような合併症が起こる可能性があります。
生活の質(QOL)の著しい低下
夜間頻尿による睡眠不足は、日中の眠気や集中力の低下を招きます。
また、常にトイレの場所を気にすることで、長距離の移動や旅行、映画鑑賞といった楽しみを諦めてしまうことにも繋がりかねません。
膀胱や腎臓へのダメージ
常に無理をして排尿したり、膀胱に尿が残った状態(残尿)が続いたりすると、膀胱の機能が低下したり、細菌が繁殖して膀胱炎を起こしやすくなります。
ひどい場合には、腎臓にまで負担がかかり、腎機能が悪化することもあります。
ある日突然尿が出せなくなる「急性尿閉」
最も避けたいのがこの状態です。
前立腺の肥大が進行した状態で、お酒をたくさん飲んだり、市販の風邪薬を飲んだりしたことなどが引き金となり、尿道が完全に塞がれて一滴も尿が出せなくなります。
下腹部はパンパンに張り、激しい痛みを伴います。
この場合は、救急で尿道に管(カテーテル)を入れて尿を出す処置が必要になります。
診断と治療
詳細な診断
まずは詳しい問診で症状の程度を伺います。
その後、尿検査、お腹の上からゼリーを塗って行う腹部超音波(エコー)検査で前立腺の大きさや残尿量を痛みなく測定します。
また、専用のトイレで排尿するだけで尿の勢いを客観的に測定できる尿流測定検査や、前述の血液検査(PSA値)を行います。
一人ひとりに合わせた飲み薬による治療
前立腺肥大症の治療は、手術が必要なケースは一部です。
まずは飲み薬による治療で、多くの患者様のつらい症状が大幅に改善します。
α1受容体遮断薬(フリバス、ユリーフ、ハルナール)
緊張して硬くなった前立腺や尿道の筋肉を緩め、尿道を広げて尿の通りを良くする薬です。
比較的速やかに効果が現れます。
β3受容体作動薬(ベオーバ、ベタニス)
膀胱の筋肉内にあるβ3受容体が刺激を受けると筋肉が緩み膀胱が広がります。
それにより、尿をより蓄えることができ、尿意切迫感、頻尿などの症状を改善することができます。
しかし、逆に膀胱の収縮力が弱まりますので、排尿困難が増悪することがあり、前立腺肥大症の患者さんで処方する場合はα1受容体遮断薬と併用することが多いです。
抗コリン薬(ベシケア、トビエースなど)
膀胱の過剰な収縮を抑え、尿意切迫感や頻尿などを改善します。
一方で膀胱収縮の抑制が強いため、排尿困難が増悪しやすいという一面もあります。
α1受容体遮断薬やβ3受容体作動薬と併用する場合があります。
5α還元酵素阻害薬(アボルブ)
男性ホルモンの一種に作用し、大きくなった前立腺そのものを少しずつ小さくしていく薬です。
効果を実感するまでには半年以上かかります。
主な副作用は肝機能障害、精子数減少などです。
専門の医療機関に紹介し、治療を受けていただくことがあります。
これらの薬を、患者様一人ひとりの症状や前立腺の大きさに合わせて、適切に処方します。
患者さんへ
夜中に何度もトイレに起きる生活を送っているのは、治療によって改善できる『前立腺肥大症』という病気が原因かもしれません。
気になる症状があれば、当院に御相談ください。
