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アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、単に「肌が弱い」という体質の問題ではありません。
その背景には、主に2つの大きな原因があることが分かっています。

皮膚の「バリア機能の低下」

私たちの健康な皮膚は、外部の刺激やアレルゲン、細菌などが体内に侵入するのを防ぎ、同時に体内の水分が外に逃げないように守る、「バリア」の役割を果たしています。
しかし、アトピー性皮膚炎の方の皮膚は、このバリア機能が生まれつき弱い傾向にあります。
例えるなら、しっかりとしたレンガの壁ではなく、セメントが不足して隙間だらけになった、もろい壁のような状態です。
そのため、外から刺激が入りやすく、内からは水分がどんどん蒸発して乾燥しやすい、無防備な状態になっています。

アレルギー性の「炎症」

その壊れたバリアの隙間から、汗や汚れ、ダニやホコリといったアレルゲン、細菌などが簡単に侵入してきます。
すると、皮膚の内部で免疫細胞が「敵が来た!」と勘違いし、過剰に反応して、かゆみを伴う「炎症」という"火事"を引き起こします。
そして、「かゆい」→「掻く」→「バリアがさらに壊れる」→「炎症がさらに悪化する」という、抜け出すのが難しいかゆみの悪循環に陥ってしまうのです。

アトピー治療の三本柱

現在のアトピー性皮膚炎治療では、以下の「三本柱」を基本に治療を進めます。

治療の柱①【スキンケア】

これが全ての治療の土台となります。
壊れた壁をセメントで補修するように、日々のスキンケアでバリア機能を補ってあげることが何よりも重要です。

洗浄

汗や汚れ、アレルゲンを肌から洗い流します。
石鹸やボディソープはよく泡立て、手で優しくなでるように洗い、ゴシゴシこすらないようにしましょう。

保湿

入浴やシャワーの後は、肌が潤っているうちに、5分以内を目安にすぐに保湿剤(ヘパリン類似物質、ワセリンなど)をたっぷりと塗りましょう。
塗る量の目安は、「ティッシュが貼りつくくらい」です。
これを1日2回、朝晩続けるのが理想です。

治療の柱②【薬物療法】

スキンケアという守りを固めつつ、すでに起きてしまっている「炎症の火事」を、お薬の力でしっかりと鎮火させます。
その主役となるのが「ステロイド外用薬(塗り薬)」です。

「ステロイドは怖い」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは誤解です。
本当に怖いのは、ステロイドを使わずに炎症を放置し、かゆみの悪循環を長引かせてしまうことです。
ステロイドの副作用は漫然と使用し続けることにあります。
ステロイドは約2か月間を目安に短期的に使用することを推奨しています。

専門医の指導のもと、症状や部位に合った適切な強さの薬を、適切な量、適切な期間使うことが、最も安全で効果的な治療法なのです。
炎症が中途半端に残っている状態で薬をやめてしまうと、すぐに再発し、だんだんと皮膚が厚くゴワゴワした状態(苔癬化:たいせんか)になってしまいます。

治療の柱③【悪化因子の検索と対策】

汗、乾燥、寝不足、ストレス、そしてダニやホコリといったアレルゲンなど、ご自身の症状を悪化させる要因を把握し、日常生活でそれらを避ける工夫をすることも大切です。

アトピー性皮膚炎のお悩みは、当院へお気軽にご相談ください。

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アトピー性皮膚炎の治療

当院では、患者様一人ひとりに合った治療ゴールを目指します。

一人ひとりに合わせた丁寧な指導

患者様の年齢、重症度、ライフスタイルに合わせて、ステロイド外用薬や保湿剤の具体的な塗り方、塗る量、スキンケアの方法などを、実践を交えながら丁寧に指導いたします。
「どの薬を、どこに、どれくらい塗るのか」を明確にすることで、治療への不安を解消します。

最新の治療「プロアクティブ療法」

急性期の強い炎症が治まり、一見ツルツルになった後も、実は皮膚の内部ではまだ炎症がくすぶっています。
そこで、症状が良い状態を維持するために、週に数回、予防的にステロイド外用薬を塗る「プロアクティブ療法」を積極的に導入しています。
これにより、急な悪化(再燃)の頻度を大幅に減らすことができます。

心のケアとパートナーシップ

アトピー性皮膚炎は、長い付き合いになることが多い病気です。
治療への不安や、見た目の悩み、日常生活での困りごとなど、どんなことでもお気軽にご相談ください。
あなたやご家族の気持ちに寄り添い、一緒にゴールを目指すパートナーでありたいと願っています。

重症例への対応

従来の治療ではなかなか良くならない重症の患者様には、近年、効果の高い新しい治療の選択肢(JAK阻害薬の内服薬や、デュピルマブなどの注射薬)も登場しています。
当院では、これらの最新治療に関する情報提供も行い、必要に応じて専門の高度医療機関へスムーズにご紹介いたします。

患者さんへ

アトピー性皮膚炎は、「一度かかったら、二度とかからない」という病気ではありません。
しかし、「正しい治療とセルフケアで、症状を上手にコントロールし、快適に付き合っていくことができる病気」です。
まずは抗炎症作用の強いステロイド外用薬で寛解導入し、炎症の改善度をみて徐々にその量を減らしていき、保湿剤と併用しながら長期間の寛解維持を目指していきます。
お肌のトラブルにお悩みの方はご相談ください。

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